ドラッグストア 分析・研究・考察まとめ

ドラッグストア界隈のリサーチ結果を記事にします。批判や、分からない点、気になるトピック等あれば、気軽にご意見いただけると幸いです。

ドラッグストア各社のオンライン対応

以前の記事で、ドラッグストアが抱える課題の一つとして、オンラインショップの台頭に言及した。 そこで、本記事では、ドラッグストア各社のオンライン対応について整理したい。

iz926.hatenablog.com

 

大手7社の対応は?

ほぼ全てが公式サイトを展開

まず、大手7社(ツルハ、ウエルシア、コスモス、サンドラッグ、マツキヨ、スギ、ココカラ)の基本的な対応について述べたい。結論から言うと、ほぼすべての企業が公式サイトは展開している。ツルハはe-shop本店、ウエルシアはウエルシアドットコム、コスモスはコスモスオンラインストアサンドラッグe-shop本店、マツキヨはマツモトキヨシオンラインストア、ココカラはココカラクラブを運営している。

 

ただし、唯一スギ薬局のみは現在オンラインショップを行っていない。以前は行っていたのだが、2015年2月末で閉鎖し、2020年5月現在まで再開されていない状況だ。

 

公式サイト成立の経緯

なぜ多くのドラッグストア企業が、オンライン販売体制を整えているのだろうか?勿論、ネットショッピングが普及する昨今において、オンライン販売を行うのは当然の対応である。しかし、ドラッグストア企業の場合、数年前まではオンライン販売の重要性は一層高かったのである。

ドラックストアの大きな利益源である医薬品の販売には、厳しい法規制が存在する。実際、医薬品のネット販売が許可されたのは2014年からだ。それも、現実の店舗で医薬品販売を行っている企業に限って許可された。従って、当時、医薬品をオンラインで購入する上で、ドラッグストア各社の公式サイトの存在感は小さくなかった。

しかし、2015年に楽天、2017年よりAmazonでも第一類医薬品の販売が始まった。各社は薬剤師を雇用し、オンラインで問診を行うことでオンライン販売を可能にしたのだ。

その結果、送料といった価格面・取扱品目といった利便性において、ドラッグストア企業の公式サイトは他者の下位互換という印象が拭えないのが現状だ。

公式サイトの違いは??

各社のサイトを見てもらえれば分かる通り、正直どれも同じような公式サイトである。UI(ユーザーインターフェース)も大差なく、強いて言えばコスモスが割と閲覧性が高い程度だ。明らかな違いといえば、PB(プライベートブランド)と送料くらいであろうか。

PBについては、各社それぞれの差別化要素になり得る。そこでしか買えないならば、その企業のサイトを利用するしかないからだ。しかし、そこまで訴求力の強いPBが各社に存在するとは言い難い。多くのPBはNB(ナショナルブランド)品の廉価版に過ぎないのが現状である。

送料については、1980円以上で無料(マツキヨ)から5980円以上で無料(ウエルシア)まで幅が存在する。ただし、一番送料の無料水準が低いマツキヨの公式サイトは、なぜか唯一トップページで送料について言及していない。尤も、安くても1980円以上であるため、基本送料が無料のAmzonに敵う訳もない。

 

海外企業のオンライン対応は?

以上の現状を見ると、有田(2020)が指摘する通り、オンラインショップの台頭はドラッグストア事業の大きな課題といえる。

では、どのような対応が望ましいのだろうか?オンラインショップの対応は、大きく分けて「抵抗」と「協調」の2つに分かれる。

「抵抗」の例は、世界最大のドラッグストアであるウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)である。Investopedia(米の金融メディア)の記事によると、WBAはAmzonの医薬品市場への参入に対抗するため、MicrosoftやAlphabet(Google等の持株会社)と提携し、IT面の強化を図っている。さらに、食料品店やヘルスケアビジネス、美容ビジネスといった分野との連携にも長年注力しており、自社商材の拡充も企図しているとのことだ。本記事は、Amazonとの抗争の結果、WBAが疲弊することを懸念する一文で締めくくられており、WBAAmazonい徹底抗戦する構えであることが窺える。

www.investopedia.com

 

「協調」の例は、アジア最大手のドラッグストアであるワトソンズである。例えば、孫(2015)によると、ワトソンズはリアル店舗からネットショッピングに移った消費者を再確保するために、タオバオ、京東、アマゾンとそれぞれ提携し出店している。

 

日本のドラッグストア企業は「協調」路線では?

個人的な意見としては、後者の「協調」路線が日本のドラッグストア企業に適していると考えている。

というのも、前者の「抵抗」路線が可能な体力は、日本のドラッグストア企業にないからだ。WBAの売上高は、国内最大手のツルハドラッグの20倍近くに相当する。そもそも米国のドラッグストア企業は、集約化が進行し、WBACVSの2強体制である。そこまで集約化が進行しておらず、個々の企業の資金力が高くない日本のドラッグストア企業は、Amzonとの徹底抗戦に耐えられないだろう。

 

それよりも、「協調」を目的として、既存のプラットフォームとの提携に注力すべきと考えている。

 

2社がAmazon Prime Nowと提携

事実、そうした例は存在している。

2017年4月、Amazonジャパンは、プライムの会員向けサービス「Prime Now(プライム ナウ)」で、ココカラファインマツモトキヨシと提携すると発表した。顧客が「Prime Now」でドラッグストアの商品を購入すると、アマゾンが受注・決済・収集・配送を担い、提携店が集荷と梱包を担うという提携内容だ。詳細は、以下記事が詳しい。

netshop.impress.co.jp

 

 この提携による、マツキヨ・ココカラのメリットは大きいと考えている。

想定されるメリットは、Amazonの強大なプラットフォームを利用できることだろう。各社の自社サイトよりもAmazonのサービスの方が、顧客へのリーチが広いことは明らかである。その一方で、想定されるデメリットは、収益の減少だ。Amazonと共同する以上、自社サイトで販売するよりも利益が減少するのは否めない。しかし、提携をせずに自社サイトのみの運用を続行するだけでは、そもそもの売り上げが期待できない。Amazonが既に浸透し、強力なプラットフォームとなっている以上、それと連携したビジネスモデルを志向するほうが筋が良いと考えられる。